多発性硬化症(MS)

多発性硬化症(MS)

多発性硬化症はよくMSと訳されることが多いです。

その病名の通り、病変部位の脳や脊髄が「多発性」に「硬化」していきます。「多発性」とは大脳・中脳・小脳・延髄・脊髄・視神経など様々な部位が、何度も障害されるということを意味します。それぞれ「空間的」「時間的」に多発すると言います。「硬化」とは脳組織を剖検すると硬く変性していることであり、医学的には「脱髄」と呼ばれます。

「時間的」に多発するため、「再発寛解型」と呼ばれる、発作が起き、軽快して、しばらくするとまた再発するという経過を取るとされます。
しかし進行してくると、明らかな発作がないのに、徐々に身体機能が低下してくる、「二次進行型」と呼ばれるタイプになるといわれています。

障害される部位により麻痺・感覚障害・視覚障害・失語・物忘れ・排尿障害など様々な症状が出現します。

重要な鑑別疾患としては次に出てくる、視神経脊髄炎があり、区別することがなかなか困難な例もありますが、最近では多発性硬化症も視神経脊髄炎もそれ専用の新規薬剤が出てきているため、しっかりと診断することが重要です。

急性期の治療としてはステロイドの点滴療法を行い、効果不十分なときには血漿交換も行います。それとともに下記のような再発予防の薬を使うこととなります。

多発性硬化症の方が、麻痺や感覚障害などの新しい症状が出現したときには新規病巣が出ていないか、MRIなどを行い評価を行います。ステロイドの治療も早ければ早いほど効果的と考えられているからです。


  • アボネックス:週に1度の皮下注射の薬です。週に1度自分で投与することができます。
  • ベタフェロン:2日に1度皮下注を行います。アボネックスより投与する頻度が多い分、効果が強い印象があります。
  • コパキソン:毎日使う皮下注射です。妊娠中の女性でも注意しながら使うことができます。
  • イムセラ:内服薬となります。効果はアボネックスやベタフェロンよりも強い印象がありますが、黄斑浮腫という副作用で視力障害が出現することがあります。血液検査でリンパ球の数が減らないか毎回確かめながら投与する必要があります。徐脈になることがあるため、初回だけ、入院してモニタ管理をしながら投与することになります。
  • テクフィデラ:内服薬です。効果と副作用のバランスの取れた薬であり、よく使われます。妊娠中でも注意して使うことができます。こちらも血液検査でリンパ球の数を確かめる必要があります。
  • メーゼント:二次進行型と呼ばれる、徐々に進行するタイプの多発性硬化症にも効果が期待できます。こちらもリンパ球の数を確認する必要もありますし、初回導入は入院して行うことが多いと思います。
  • タイサブリ:1月に1度の点滴の薬となります。多発性硬化症の進行を止めるうえで最も強力と考えられますが、進行性多層性白質脳症と呼ばれる脳への感染症が起きる可能性があり、なかなか使いにくい薬でした。しかし最近、投与間隔を延長することで進行性多層性白質脳症になりにくくなるという知見が出てきており、今後はより使いやすくなるかもしれません。
  • ケシンプタ:1月に1度の皮下注射の薬です。メーゼントと同様に徐々に進行する二次進行型と呼ばれるタイプにも効果が期待されています。

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