睡眠剤は認知症のリスクとなるか
睡眠薬・抗不安薬と認知症はこれまで様々な事が言われておりました。
一昔前は睡眠剤が認知症のリスクとなるという論文が優位でしたが、最近では睡眠剤により認知症になるリスクはそれほどないのではないかという論調に変わっておりました。
しかし、この度295万人という膨大なデータを用いて、睡眠薬・抗不安薬と「認知症」のリスクについてまとめた文献が出ています。
約295万人という膨大なデータを分析した大規模な調査報告です。
ベンゾジアゼピン系・非ベンゾジアゼピン系と言われる、一般的な睡眠薬、抗不安薬を使い続けると、将来的に認知症になるリスクがどのくらい変わるのかを調べています。
結論から言うと、「睡眠薬や抗不安薬を長く使い続けることは、認知症のリスクを高める可能性がある」という結果が出ました。
薬の種類ごとのリスク
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睡眠薬・抗不安薬を飲んでいる人全体
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認知症のリスクが 約1.15倍 に上昇
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アルツハイマー病のリスクが 約1.21倍 に上昇
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ゾルピデム(マイスリーなど)を飲んでいる人
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リスクが 約1.28倍 に上昇
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ベンゾジアゼピン系の薬(デパス、ハルシオンなど)を飲んでいる人
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リスクが 約1.11倍 に上昇
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【特に注意】2種類以上の薬を併用している人
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リスクが 約1.75倍 と、大幅に上昇
この研究からわかることは一般的に使われている睡眠薬・抗不安薬は認知症のリスクとなりうることであり、特に非ベンゾジアゼピン系と言われているゾルピデムでリスクが高く、多剤併用でさらにリスクが上がるということとなります。
以前の文献ではリスクがあまりないという文献もあり、この問題は一概には言えないところはあるかと思います。
しかし、今後ベンゾジアゼピン・非ベンゾジアゼピンには要注意となってきざるを得ないと思います。
ヨーロッパやアメリカなどではすでにこのような薬は常用しないようにと通達が出ています。
依存性や耐性の少ない新しい睡眠剤や抗うつ薬など多彩な薬の選択肢のある中、ベンゾジアゼピン・非ベンゾジアゼピンの使用は厳格にあるべきと思います。
Mol Neurobiol. 2025 Jul;62(7):9449-9468. doi: 10.1007/s12035-025-04821-9. Epub 2025 Mar 20.
Use of Drugs Affecting GABAA Receptors and the Risk of Developing Alzheimer's Disease and Dementia: a Meta-Analysis and Literature Review



